さる3月27日に開催された平川武治トークイベントでは、
大勢の方にお越し頂き、ありがとうございました。
少し時間が経ってしまいましたが、簡単なまとめ報告をします。
(といっても結構長いです!)
***
平川武治トークイベント
「真剣ファッションしゃべり場 共棲資本主義時代のクリエーションとは?」
2010年3月27日@日本橋Co-Net
2月末に新宿で行われたアートフェア「アート天国 虎の巻 2010」でのアートとファッションの刺激的なクロストーク、そしてインディペンデントなクリエイターが集う東日本橋(Central East Tokyo)でのイベント「CET TRIP 2010」開催をきっかけに、モード批評家の平川武治さんを囲む、トークイベントが実現しました。
平川さんが発信する「共棲資本主義」というキーワードと、CETエリアの街と一体化するインディペンドかつプロフェッショナルなコミュニティの動きがリンクするのでは? またそこに生じる問題を解決する糸口のひとつに「ファッション」がなりうるのでは? そんな発想から、今回の企画が出発しました。
当日は、25年間パリと東京を行き来しながらモードを通して時代を読む平川さんの経験に基づく見解をはじめ、CETエリアや来場された方々の話を交えることで、それぞれに共棲資本主義について捉え、そこにあるべきクリエーションを考える、有意義な会となりました。
以下、平川さんの話から、印象に残る言葉をランダムにピックアップします。
★共棲資本主義とは?
(平川)
僕からのアジテーションは、「20世紀を忘れろ」。
20世紀を支配していたある種の「独占資本主義」が今世紀も継続すると、僕たちの地球はより、危機感にさらされることになるだろうという視点からです。
そう考えたときに出てきたキーワードが「共棲資本主義」。
共棲資本主義とは、まず、いかに他人のことを思い遣れるかということ。
そのためには、謙虚な心、つまり日本的なマインドを持つべき。
そして、自然と、社会と人、そしてモノとの共有と共棲についてを、自由な裁量で持ち得た、自分たちの大切にしなければならない価値観でフレーミングされた社会において、考えていこうと。そうすれば接点がつながって、現実化していく。
その根拠となるのは、本質を知り、好奇心を持って教養を高め、“人間”としてがんばること。例えば、日本人商人の代表である昔の近江商人の価値観に、「三方よし」というのがある。この三方とは、「我よし、客よし、世間よし。」で、この思いは「共棲資本主義」を考えるのに一つのヒントとなる。
自分たちだけが良くてもだめ。みんなが分かち合って生きていくことを大切だと考える場合、自分たちのリスクとコストを払って実現し、継続していくことが大事。
もし、自分がこのような新たな環境のもとで、作り手として生きていきたいのならば、自分の価値観と世界観を持って欲しい。
自分の世界観を出すには、自分自身の中を見ること。身の回りにある情報だけに囚われていると、同じようなものしか出てこない。今という時代は、それでもなんとか生きられてしまう、物質的な豊かな現状があるだけ。何を方法とするかは、「問題意識」と「美意識」を持って、それぞれが自由や若さや豊かな発想を持って真剣に考えることで、見えてくるでしょう。
若いファッションデザイナーを目指す人たちに言いたいのは、どうしても作りたいなら、無理して価格が高くなる構造でモノを作るのではなく、最初はアトリエ形式で自分の身体性と理性、欲望、気概、そして、リスクとコストのバランスで、こつこつ自分の世界観で、自分らしいものを作るべきだということ。それをやることで、出来ることと出来ないことが初めて見えてくる。その時間を持つことによって、誰に委ねた方が良いものが出来るか、誰とやるべきかというポイントがクリアになる。そうした自分の努力を見て、バックアップしてくれる人たちも出てくるでしょう。
これからの新たなファッションビジネスの関係性は、「オリジナルタブローかポストカード」という図式。オリジナルタブローに“It’s a so Special” なクリエーションがあれば、あるほど、そのポストカードが売れる、というまでのビジネス。
これからはより、イメージからリアリティ/エピソードが大事な時代へ向かう。
イメージはPCが発達した今の時代では誰でも作れるもので、エピソードはその人やブランド、当事者のリアリティでしか作れないもの、持ち得たリアリティを続けることもエピソードになる。
売ることによってエピソードを持つという手法もある。だから、若いデザイナーたちも堂々と自分の世界観で作った物を売ることに直視するべき。
★トークイベント直前に巡ったCETエリアについて、
(司会より)アート、建築、ファッションなど様々なジャンルの若手を中心とする人々が、古い建物を自分たちなりにリノベーションし、点と点が結ばれてネットワークが出来ている。スープの冷めない距離でそれぞれの持っているものをシェアし、新しいことをやろうという気持ちが自然に生まれている。
(平川)
街にある点が面になってしまうとつまらなくなってしまう。東京の中心地は資本が入ったことによってベタになり、この商業主義の過剰さによって最後には過疎化していくが、CETにはまだ個性が点在している。プロムナードの面白さがこの界隈にはある。
この街に期待するのは、レジデンサー=この地域に住んでいる居住者たちをお客さんにするということ。地元の人が品物を買い、コーヒーを飲みに来るような自家消費型の分かち合う地域構造がいかにつくりだせるか。今のセレクトショップの発想は、いわゆる、ツーリスト-タイプをターゲットにしているから弱く、限界があるだろう。パリでも、今はコレットより、マレ地区のコミュニティにコミットしているメルシーという新たなこのコンセプトで始まったセレクトショップの方が受けている。
先の『三方良し』の発想を持って考えると、新参者は新参者として先輩にどう礼節を、分け前を提示出来るかが大事。若い人の可能性がある中で、いかにその方法論をこれから考えて、地域社会へ自分たちは何を差し出せるのか? これも新たな共棲化社会へ向かう、謙虚さのある想いでしょう。
(司会より)そこでファッション!というアイデアがひとつある。
既製服問屋街として歴史あるこのエリアで関わるきっかけとして、昨年末に、CETの地域に関わるクリエイターが集って、路上も使ってファッションショーが行われ、好評だった。
(平川)
既に在るものと若手の作った作品などを自由な感覚でコーディネートするのは、新たなひとつの「コミュニケーション」手段になりうると思う。ファッションの人はファッションだけに入り込みすぎてしまう。では、あなたたちが持っている自由さは何なのですか? それを考えることで今後の強みにして欲しい。
★会場にお集まりのファッション関係の方々から、コメントをいただきました。
栃木県那須でイベント、スペクタクル・イン・ザ・ファームを企画しブランド、シアタープロダクツに関わる金森香さんは、地域のコミュニティとのつながりをどう作っていくかということが頭にあるとのこと。思いを伝える、場を盛り上げる、芸術の意味を共有するために考え始めることが大事だとコメント。
POTTOデザイナーの山本哲也さんは、自宅兼ショップで、自分で作ったものを自分で売っている。洋服以外でも、チョコレート、せっけん、パンやお茶も。地元の人も買いに来てくれる。そこで生活しているというリアリティからものを作って、それを続けることでエピソードが生まれてくる、というのが自分のやり方なんじゃないか。ファッションは利幅が大きいので在庫を残さなければ儲かる。これはユニクロからも学べること。ものごとの本質さえ見ていれば方法論は何でもありでは。
Share Spiritデザイナーの片野光さんはパリで10年以上展示会を行っている。年に15カ国ほど回って旅をする中で、各所の生活に伴った住人たちの衣服に魅力を感じてコラボレーション。デザイナーとして自分の魂を分け与えている。不安をかかえながらも自分を100%表現することによって、バイブレーションを感じて類友が集まる。その結果ビジネスも成り立っていると。
etc.
***
平川さんが、アフリカのマリ共和国に人生最後のヒッピー旅行をした際、帰りのバスを待っていたら、満員で乗れずに4台乗り過ごし、野宿を覚悟していたら、横に居たお兄ちゃんが通ったベンツに駆け寄って交渉してくれ、乗り合いバスに乗る料金で3時間半で運転手つきのベンツに乗って街に帰れたそうです。状況の違う3人がそれぞれハッピーになった。ここに「共棲資本主義」のヒントがあると思ったというお話が、印象的でした。
ジャック・アタリの著書『反グローバリズム/新しいユートピアとしての博愛』(彩流社刊/近藤健彦・瀬藤澄彦訳/2009年6月再版)にあるように、他人が幸せなら、自分も幸せだというマインドを持つべきだと、平川さんは繰り返していました。
その後も様々な場面でこの言葉を再認識させられます。
ファッションだけでなく、世界のあらゆるシーンが激変する今の世の中において、「共棲資本主義」という考え方からは、たくさんのヒントを受け取れるのではないでしょうか。それぞれの状況の中で考えを進め、これからの行動につなげていきたいものです。
*****
運営に至らぬ点もありましたが、ご来場・ご協力いただきました皆様のおかげで有意義な会となり、感謝しています。
どうもありがとうございました。
小林沙友里、宮村周子
2010年06月03日
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たんまり突きまくって20満ゲトって、信じられんわ!!!
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